シェルティの交配禁止完全ガイド|毛色別の安全・危険マトリクスと遺伝病リスク

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シェルティの交配禁止について知っておくべきこと

シェットランド・シープドッグ(通称シェルティ)は、長い歴史と血統の維持によって現在の美しい姿と性格が守られています。そのため、血統管理団体やブリーダー間では「交配禁止」とされる組み合わせが存在します。これは単なるルールではなく、犬の健康や品種の特性を守るための大切な取り決めです。

なぜ交配禁止のルールがあるのか

  • 遺伝病の予防:同じ遺伝子異常を持つ犬同士を交配すると、子犬が病気を発症する確率が高くなります。
  • 極端な毛色や特徴の回避:特定の毛色同士を掛け合わせると、失明や聴覚障害などが生じる可能性があります。
  • 犬種の基準保持:シェルティの理想的な体型・毛質・性格を保つために、国際基準やJKC(ジャパンケネルクラブ)の規定が存在します。

主な交配禁止の組み合わせ

毛色の組み合わせ理由
ブルーマール × ブルーマール25%の確率で「ダブルマール」が生まれ、先天的な失明や聴覚障害を持つ可能性が高くなる。
セーブルマール × セーブルマールブルーマール同様、ダブルマールによる健康リスクが発生するため。
バイブルー × ブルーマール毛色の遺伝が複雑になり、ダブルマールのリスクが残る。

遺伝異常(遺伝性疾患)と交配ルール【シェルティ】

シェットランド・シープドッグで重要な遺伝性リスクと、その交配指針を整理します。各項目は「概要/遺伝形式/主な症状・問題/検査と交配ガイド」の順で記載しています。

1. マール(Merle)同士の交配禁止

  • 概要:マール(M)遺伝子は半優性。M/m × M/m(マール同士)では約25%でダブルマール(M/M)が生じ、先天的な難聴・失明、極端な白斑、微小眼などの重篤リスクが高まります。見た目で判別しづらいクリプティック(隠れ)マールヒドゥン・マールもあるため、DNA検査で確認してから繁殖に用いるのが安全です。
  • 遺伝形式:半優性(Mが1つでマール表現)
  • 検査と交配ガイド:
    • 禁止:マール × マール(M/m × M/m
    • 許容:非マール × マール(m/m × M/m)※ただしマールの扱いと譲渡説明を徹底
    • 要検査:サブルーマール/セーブルマール疑い、薄いマール、サンドカラー風はDNAで判定

2. CEA(コリー眼異常/脈絡膜形成不全)

  • 概要:眼底の発達異常(主に脈絡膜形成不全)。軽症〜重症まで幅があり、6〜8週齢での眼科検査が推奨。成長で所見が隠れる「go-normal(マスクド)」があるため早期検査が重要。
  • 遺伝形式:常染色体劣性N/N=クリア、N/m=キャリア、m/m=発症)
  • 検査と交配ガイド: 組み合わせ結果と指針 クリア × クリア全頭クリア。推奨。 クリア × キャリア発症なし(50%キャリア)。計画的に可。 キャリア × キャリア25%発症リスク。不可。 発症保因(m/m)を含む交配発症子犬の可能性あり。繁殖不適。 繁殖前にDNA検査+6〜8週齢の眼底検査をセットで運用。

3. CNGA1関連PRA(進行性網膜萎縮症:シェルティ型)

  • 概要:網膜変性により夜盲から進行し失明に至る群の一部を、CNGA1遺伝子の欠失が説明。シェルティではCNGA1型が代表的だが、他原因のPRAも存在するため注意。
  • 遺伝形式:常染色体劣性
  • 交配ガイド:CEAと同じ基準(キャリア × キャリア不可発症犬は繁殖不可)。

4. vWD type 3(フォン・ウィルブランド病:タイプⅢ)

  • 概要:凝固因子vWFが欠乏し、重度の出血傾向。手術・抜歯・事故で致命的になり得ます。
  • 遺伝形式:常染色体劣性
  • 交配ガイド:CEAと同じ。キャリア × クリアは可だが、血統管理台帳で可視化し、将来的にはクリア化を目指す。

5. MDR1(ABCB1)薬剤感受性

  • 概要:イベルメクチン系・ロペラミド・一部抗がん剤などで神経毒性が出やすい。−/−(ホモ変異)で高感受性+/−(ヘテロ)でも中等度の注意が必要。
  • 遺伝形式:表現型は用量依存だが、繁殖上は実務的に劣性扱い(−/−を作らない)で管理。
  • 交配ガイド:
    • 推奨:クリア × クリア
    • 許容:クリア × キャリア(子の50%がキャリア)
    • 不可:キャリア × キャリア、変異同士(−/−発生のため)
    いずれの遺伝子型でも獣医にMDR1情報を共有し、禁忌薬・用量調整を徹底。

6. DMS(皮膚筋炎)リスク

  • 概要:コリー系でみられる自己免疫性の皮膚・筋疾患単一遺伝子ではなくA(PAN2)・B(MAP3K7CL)・C(DLA-DRB1)の組合せで低・中・高リスクに区分するリスク評価検査が用いられます。
  • 交配ガイド:子犬が高リスクにならない組み合わせを選ぶ。低 × 低は安全域、低 × 中も設計次第で可。高 × 高は回避。

7. 胆嚢ムコセレ(GBM)素因

  • 概要:シェルティでの罹患が相対的に多いとされ、遺伝要因+環境因子の関与が示唆されています。確定的な交配禁止ではないが、家系で発症が続く場合は超音波スクリーニング脂質管理を含めた繁殖判断が推奨。

交配判定クイック表(実務用)

対象遺伝形式主指針禁止・回避備考
マール半優性(M)非マール×マールは可マール×マール全面禁止隠れマールはDNAで確認
CEA劣性キャリア×クリアは可キャリア×キャリア、発症犬の繁殖6〜8週齢の眼底検査必須
PRA(CNGA1型)劣性キャリア×クリアは可キャリア×キャリア、発症犬の繁殖他型PRAの可能性も念頭に
vWD type 3劣性キャリア×クリアは可キャリア×キャリア、発症犬の繁殖外科処置前の把握重要
MDR1実務上は劣性管理クリア×キャリアは可キャリア×キャリア、変異同士薬剤情報を獣医と共有
DMS多因子(A・B・C)高リスクを産まない配合設計高×高は回避リスク評価検査を活用

交配前に必ず確認したいこと

  • 血統書に記載された毛色と両親の毛色
  • 遺伝病検査(MDR1、CEA、PRA[CNGA1]、vWD3、DMSリスク評価など)
  • ブリーダーや獣医師による健康診断結果

まとめ

シェルティの交配禁止ルールは、単に「やってはいけない」という禁止事項ではなく、犬の健康と未来のための重要な配慮です。上記の遺伝異常と検査・交配指針を押さえておけば、「なぜ禁止なのか」→「何を検査し、どう組み合わせるか」まで一気通貫で意思決定できます。愛犬家として、正しい知識と記録管理で、シェルティという素晴らしい犬種を守っていきましょう。

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